ラットマン治郎吉
2008年03月27日

ラットマン治郎吉
夜の大江戸八百八町に「御用!御用!」の捕り物の大声が響く!
「鼠小僧治郎吉!神妙に縛につけ!」
同心の近藤勘助が叫ぶ。
「もう捕まえたも同然ですね!JP3」
岡っ引きのさね吉が、同心に向かって言った!
「さね吉!近藤様と言え!そのJP3はいかんっ!」
同心の近藤がさね吉の口を押さえて言った。
「そうでしたね、つい・・・」
同心の近藤の正体は、日本の”時間警察”のJP3という犯罪捜査官だった。
手下のさね吉の正体も、JP3の部下のJP11という捜査官だったのだ。
時間刑事の2人は、通称”ラットマン”と呼ばれている時間犯罪者を追って、はるばる江戸の町までやってきたのである。
時間警察の刑事は、怪しまれぬようその時代の人物に変装しなければならない。
JP3は同心に、JP11は岡っ引きに変装していた。
追跡してきたラットマンは”鼠小僧治郎吉”と名乗って、江戸中を騒がせているのだ。
「治郎吉は義賊と呼ばれ、江戸じゃ有名らしいですよ」
さね吉ことJP11は、同心のJP3に言った。
「義賊だろうが何だろうが、時間を乱す奴は逮捕する!それが俺たちの任務だっ!」
同心の近藤は、腕にはめたタイム・ブレスレットを指差しながら言う。
25世紀のタイムマシンは小型化され、ブレスレットの形をしている。
厄介なことに、ラットマンはタイム・ブレスレットの他に、ベルト型の物質変換装置を装備していた。
通称”トランスフォーム・マシン”とも”T・M”とも呼ばれ、物や生物を何にでも変形させてしまう。
ラットマンと呼ばれているその男は、彼がネズミになって追っ手の目をくらますのが有名なので、その名前が付いた。
「鼠小僧!!腰に光るT・Mが、ラットマンの証拠だっ!」
JP3同心近藤が言う。
「ラットマンめ!今度こそ逃がさん!!」
JP11さね吉が言う。
大江戸の屋根づたいに鼠小僧が走り抜ける
木造の瓦屋根をカタカタ音をさせながら、ラットマンこと鼠小僧治郎吉は逃げ続ける。
「しかし、おめーら時間警察もしつっこいね!」
治郎吉が大きな声で、同心と岡っ引きに向かって言った。
「俺も、江戸で平和に暮らしてんだよ、ほっといてくれないか!」
治郎吉が続けて言う。
同心の近藤が、屋根にいる治郎吉に向かって叫ぶ。
「何が平和に暮らしてるだよっ!充分町を騒がせてるだろう!」
「俺は、今じゃ義賊で通ってる有名人よ!貧乏人たちが待ってるんでな!」治郎吉が答える。
「そんなことやってたら、時間の流れが変わってしまう」だろう!」同心が言う。
「知ったこっちゃね~!!」治郎吉が言う。
「止まれ!撃つぞ!」
そう言いながら、同心と岡っ引きはレーザーガンの銃口を、治郎吉に向けかまえた。
「おおっと!レーザーガンとは穏やかじゃないねっ!」
治郎吉は、とっさに物質変換装置に手をかけようとした・・・
瞬間、同心の近藤が放ったレーザーが、治郎吉の手をかすめ、治郎吉は屋根から滑り落ちた。
「鼠に変身しようたって、そーわいかねぇ!」
岡っ引きのさね吉が、屋根から落ちて倒れている治郎吉に縄をかけた。
「もう観念しろ!治郎吉!」同心が言う。
縄にかけられた治郎吉は、いきなり物質変換装置に手をやり、鼠に変身した。
とたんに縄が外れ、鼠になった治郎吉が、路地裏に逃げ込んだ。
「くそっ!逃がすもんか!」同心と岡っ引きが同時に叫ぶ!
2人が追いかける目の前を、ドブネズミが走っている。
「鼠が小さすぎて、レーザーガンは無理だ!」同心が言った。
そう言っている2人に前に、突然犬ほど大きな三毛猫が現れ、走っている鼠にいきなり食いついた。
が、早いか猫は鼠を、あっという間に食い尽くしてしまった。
「ぎゃっ!」
と叫び声が聞こえたが、もはや遅し、哀れ治郎吉は三毛猫の餌食となってしまった。
「むごい最期ですね・・・」岡っ引きのJP11が、顔をしかめて言う。
「ああ・・・酷い最後だ・・・」同心のJP3も言った。
「あれほどの犯罪者が、猫の餌になってしまうとは・・」
2人は腕のタイム・ブレスレットのスイッチを入れ、もと来た25世紀へと帰っていった。
ニャァ・・と甘えた鳴き声をたてながら、大きな三毛猫が満腹そうに男の足元に擦り寄っていく。
「ミケ之助よ!よくやった!」
その三毛猫を抱き上げながら、治郎吉が言った。
「俺は野ネズミよっ!ドブネズミじゃあないぜっ!」
三毛猫の背中の毛をなでながら、猫に向かって治郎吉が言う。
「屋根から落ちるのも、猫に食われた振りをするのも、すべて俺のたくらみどうりってもんよ!」
そして、ほくそ笑みながら、ラットマン治郎吉は言った。
「俺は死んじまったことになった以上、もう奴らも追ってはこんだろう」
「早く、かかぁんとこへ帰ろ・・ガキも待ってることだしな・・・」
そう独り言をつぶやきながら、治郎吉は八軒長屋へ帰っていったのだった。
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